画中のワインを読む
絵画に登場するワイン。
おそらくそこに深い意味が込められたものは、ほとんどありません。
でももしかしたら、静かなストーリーが流れているかもしれません。
それを汲んでみようというのが私たちの試みです。
ワイン好きとしては、描かれたすべてのワインに画家が何かしらの認識をしていると嬉しいものですが、宗教や神話をベースとしたナラティブ絵画 ( 布教のために聖書の内容を伝えるための作品など) でない限り、残念ながら描かれたワインや飲みものは、空間を構成しているただ一要素にすぎないでしょう。

でも、
例えばゴッホの椅子は、彼の代表作のモチーフである以前に、当時アンダルシアで作られていた民芸椅子でしたし、
同じように、モネの昼食シーンにころがったワインボトルは、当時のパリ市民の生活のワンピースだったでしょう。
例えばセザンヌのリンゴは、画家の好物だから描かれていたわけではなく、形や色が気に入られていたわけでもないといいます。
しかし結果、セザンヌ=リンゴというほど重要なモチーフとなりました。
画中に登場するワインも、画家が大義を持って描き込んだのでないとしても、少なくともそこに存在する必然性はあったわけです。
私たちは、描かれてきたモチーフに無理やり深刻な意味を色付けするつもりではなく、
ただそこにあり、彼らの日常の一部だったはずのワインに、その時代背景や描かれ方からアプローチしてささやかなストーリーを見出してみたいと思うのです。
いったいどんなワインリストが浮かび上がってくるのか。
画家のPalette-パレット-から描き出されたワインはどんなPalate-味わい-だったのか。
探求と空想の旅の始まりです。