Gustave Courbet(以下、クールベ)の「オルナンの食休み」は比較的妄想しやすいワインであると考える。
なぜなら「オルナン」在住のおっさん達がごく日常的な食事の場面で飲んでいる「デイリーワイン」だからである。
「オルナン」はフランスの10大ワイン産地の中でもジュラ・サヴォワ地方に所在する。特に同地方の中でも北に位置するジュラ県に存在し、その中心都市アルボワから北東に40km弱の距離にある。

恐らく地元のワインだろうと仮定して、次は品種は何か?という話になる。
グラスを見るとワインに褐色の色味がついているので赤ワインかと思いきや…ここで立ちはだかるのがジュラ地方特有のヴァン・ジョーヌ(黄ワイン)とヴァン・ド・パイユ(藁ワイン)の存在である。ともに濃い黄色をしたワインである。
どっちだよ!と頭を抱えていると…気付いてしまった、描かれているワインボトルが普通の形や!と。
ヴァン・ジョーヌの場合「クラヴラン」と呼ばれる620ml入りの背の低いボトルに詰められ、ヴァン・ド・パイユの場合「ポ」と呼ばれる375ml入りの小型のボトルに詰められるはずなので、画中のボトルはそのどちらでもないのだ!
またともに製造過程がユニークであり価格も多少は割高であろうことも踏まえると、「デイリーワイン」には不向きなのかなぁとも考え、赤ワインを選択することにする。
ジュラ地方の代表的な黒ブドウ品種と言えばプールサール、トゥルソー、ピノ・ノワール(グロ・ノワリアン)が挙げられるが、素直に考えるとすれば現在ジュラ地方の赤ワインの80%を生み出しているとされるプールサールであるとするのが妥当であろう。プールサールは淡い色調にもかかわらず香り豊かなのが特徴の品種。当時の主流であったかは不明だが、ワインジャーナリストの柳忠之氏の記載(出所:日本ソムリエ協会 教本2018)によると同品種は15世紀からジュラ地方で栽培されているとのことである。
一説では、クールベの父親はワイン用のブドウ園を所有していたとする説もあり、そのブドウで造られたワインかと想うと、これまた夢の広がる話である。
さて、話を振出しに戻す。
なぜ、クールベを最初に取り上げたかったのか。
それは…彼がréalismeという一時代を確立していなかったら、バルビゾン派や印象主義の画家たちがここまで持て囃されることもなかったかもしれないからだ。
「ワイン」という庶民的な飲み物を絵画の中に取り入れたのも多くはバルビゾン派や印象主義の画家たちであることを考えると、クールベの存在なくしてはこのブログも立ち上がってなかった可能性すらある。
そんなクールベに敬意を表して、こんな「滋味」な絵を紹介させて頂いた訳である。
次はEricoさんが皆さんを素敵な絵画とワインの世界にナビゲートしてくれる番です!
私も一読者として彼女のポストを心待ちにしています!
Gustave Courbet “L’Après-dînée à Ornans” (1849) フランス・リール宮殿美術館所蔵
Written by Fumi “Frank” Kimura
コメントを残す