藤田嗣治/カフェにて × Haut-Médoc(後編)

カフェ

寄り道、フジタの薔薇

作品から一度逸れます。フジタといえば、ワインを知っている方ならばシャンパーニュ、G.H.Mummを想起する方が多いはずですので、せっかくなので軽くご紹介しておきます。

現在でも販売中のシャンパーニュ・ロゼのキャップに描かれている、バラのマーク。

これはG.H.マムの当時の社長だったルネ・ラルーがフジタに依頼して描かれた水彩画です。

フジタは1959年にカトリック教徒になりますが、その洗礼の場所が シャンパーニュはランスのノートルダム寺院、洗礼親はラルーでした。
彼らのおかげで私たちはいまでも、彼の痕跡をテーブルの上に見ることができます。
(私はまだいただく機会には出会っていませんが)
rose
実際には、フジタのサインまでしっかり見てとれます

思索と手紙の傍に

さて、しかし今回注目するのはご覧の通り、赤ワインです。

このカフェに登場しているワイン(おそらく奥のボトルを含む)について、
という本にさらりと言及されている箇所がありました。

This cafe interior, with Authentic wine, waiter, and crumpled news paper rack …(略)

品質の良いものがリストされていたのは間違いなさそうです。

ソーサーに置かれた問題のワイン、明るい赤ではないですが、輝きがあります。

仕事帰りにリフレッシュの一杯、というのではもちろんなく、手紙を書くための時間を作ってカフェに訪れていることを考えると、彼女がこのひとときのために、ハウスワインの一杯でなく、こだわって選んでいても不思議ではありません。

そうなると、赤ワインであれば王道ボルドーかブルゴーニュといきたいところです。

しかもグラス提供してくれるものを。

手紙は、近況や感情を伝えるもの。
形のない思いをしっかりと言葉にして紙に乗せていくもの。
そんな時に、華やかで気分が高揚するようなワインよりは、

気持ちの柱となってくれるような、骨格と密度があるワインのほうが、筆が確かになるような気がします。

mademoiselle

カフェの当時のメニューまではわかりませんが、参考までにグラス提供されている現在のLe Dômeのメニューをみてみると、気になるワインがリストされていました。

その名も、マドモアゼル。

まさにぴったりです。こちらはメドック格付け3級、名門 Château La Laguneのサードラベルでした。

grd7066

2004年に生まれた新しいラベルですから、このワインが当時あったわけではもちろんありません。しかしなんとなく導かれましたので、自由に進めます。

Le Dôme をはじめ当時から続く歴史あるカフェは、時代とともに変遷はあれども、基本的な信念は変わらないのではないでしょうか。

ですのでワインセレクションもそうだと信じ、当時あったオー・メドックのワインをこのグラスに想像してみます。

ボルドー
3本の河川を中心に広がるボルドー産地。オー・メドックは左岸の広域を占めています

 

ワイン産地「オー・メドック」は、世界トップクラスの銘醸地、ボルドーの左岸に位置します。

ワイン好きでなくても知っているワインの代表 シャトー・マルゴー。その生産地であるマルゴー村も同じ左岸に含まれています。

このエリアで造られるワインは、深くしっかりした味わいのカベルネ・ソーヴィニヨンというぶどうをメインに、やわからさを添えるメルロなど、いくつかの品種をブレンドして作られます。
時間をかけるほどエレガントに女性らしくなっていく、まさに貴婦人のワイン、という印象です。
ワインを片手に、自身の内面を見つめるか、相手の状況に思いを馳せるか、そして生まれ出ずる言葉をうまくまとめていく。

そんな場面には、ボルドー 左岸の、骨格あるスタイルのワインが助けとなってくれたのではないでしょうか。

いずれにしても、気品漂う姿でちょっとミステリアスな表情を浮かべる彼女には、同じくらい気高く思慮深いワインを、添えておきたいと思うのです。

 

*この作品の年代についてひとつ。
実はこの点に少々複雑なところがあります。
フジタがこの絵に回想していたと思われるのは1920年代のパリなのだけれども、このカフェのインテリアや人々のスタイルをみると、どうもその10年ほど前のものである、と言われています。
しかし今回は、実際に画家が思い浮かべたであろうワインをフィーチャーするため、彼がもっともパリに生きたと言える年代を軸とさせていただきました。

 

Léonard Foujita “Au café” 1949 パリ ポンピドゥー・センター蔵

Written by E.T.

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