Johannes Vermeer / 紳士とワインを飲む女 × Margaux (前編)

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今回は、愛すべきフェルメールを取り上げます。

名作「デルフトの眺望」をはじめ、独自の手法で静謐な室内画を多く制作。

ミステリアスなことも手伝って、世界中で人気を博すJohannes Vermeer (1632- 1675) 、オランダはデルフト出身の画家です。
出身というより、彼は生涯この街を出ることはほとんどなく、43歳で亡くなりました。
デルフトは現代でも、「デルフト焼き」というくらい焼き物で有名ですが、歴史を辿れば中国の磁器、そして日本の伊万里の影響があると言われています。

フェルメール人気と、オランダ黄金時代

さて、フェルメール人気の理由のひとつはよく知られている通り、その作品の希少性。

全世界でも35点ほどしか残っていない上に、(だからこそ)盗難の対象となりやすく、ただでさえ少ない作品のいくつかがまだ消失したままです。
歴史上の重要度、そしてもしかすると作品の完成度も含めても、同じく17世紀オランダ黄金期の出身でフェルメールよりも一世代ほど年上のレンブラント(Rembrandt Harmenszoon van Rijn 1606-1669)の方がよほど重要な影響を残しているのにも関わらず、フェルメールの人気は現代になり加速度を増しています。

そんなフェルメールの生きたオランダ17世紀は、この国一番の黄金時代でした。
有名なチューリップ・バブル(球根1つの価格が家ほどの値段になった) は画家が5歳の頃に崩壊していますが、オランダの大航海時代はまだまだ続き、国中に異国の食べ物や調度品があふれていました。

中継貿易の恩恵に見る生活の断片

今回の作品を見てみましょう。
パッとみただけでも、4カ国以上の外来品を見ることができます。

  • 青い椅子
これは背もたれに獅子の彫刻がついた、スペインのスパニッシュチェア。

  • テーブルクロス
本来は絨毯ですが、高級品なので床に敷くよりもこのようにテーブルクロスにしたり、壁にかけたりして楽しんでいたそうです。トルコから。

  • ワイングラス

本題に迫ってきました。このグラスは、縁こそフラスコのような三角形に広がってはいるものの、現在私たちが知っているものと比べてもあまり違和感なく、薄いガラスでできているのがわかります。薄いグラスに加工するのには技術がいるので、これはベネチアから来ているものであると思われます。

ところでこの時代はまだ、食事には手を使っていました。それも、バターや肉の脂がたっぷりの料理をです。
当然手はベトベト、そんな手でワイングラスを持とうとすれば滑ります。

ですから滑り止めのため、多くのワイングラスの脚は太く作られていた上、ゴツゴツした突起がありました。
(繊細なリーデルも、この世界では使い捨てグラスになってしまいます)

例えば、ほぼ同時期に描かれた別の作品に登場するワイングラスを見てみると、現代との違いをもっと明らかに見ることができます。

Jan_Vermeer_van_Delft_002
「取り持ち女」1656

今回の作品に登場するような、薄くて少なからず高級品であろうこのグラスにも、よーく見ると脚の中央に丸い玉がついているのがわかります。

  • ワイン

ワインについては後ほど見ていきますが、当時中継貿易で栄えていたオランダ。
おそらくはフランスであろうと想像します。ワインの入っているピッチャー自体は、オランダの焼き物です。

フェルメール・ブルー、さりげない配色

色彩におけるフェルメールといえば、のちにフェルメール・ブルーと呼ばれる青色を惜しみなく使ったことでも知られています。

これは「ウルトラマリン」と呼ばれていた顔料で、非常に貴重な鉱石 “ラピスラズリ”(Lapis lazuli)から作られています。17世紀には金よりも貴重で、「天空の破片」とも呼ばれるほどでした。(マリンなのに、です)

ちなみに、この時代はまだ今のようなチューブ入りの絵具などはありません。フェルメールも、工房を持っていたわけではないので自身で顔料とオイルを混ぜて絵の具を作るところから制作を始めていたはずです。

ですが彼の色への気遣いは、もっとささやかなところにも見られます。
たとえばこの作品で言えば、

男性の黒い帽子と、女性の白い頭巾。
控えめなモスグリーンのマント、サーモンピンクのドレス。

こんな風にさりげなく反対色を描き出すフェルメールの繊細な感覚もまた、これだけ人を惹きつけるひとつの要素なのかもしれません。

Johannes Vermeer “Het glas wijn” (1658-1660) ベルリン絵画館 蔵

Written by E.T.

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