John Singer Sargent/ベニスのタバーン×Soave(前編)

イタリア生まれ、フランス美術育ち、イギリスでキャリアをあゆむアメリカ人

ジョン・シンガー・サージェント (John Singer Sargent, 1856- 1925)は、アメリカ人の画家。 イタリアはフィレンツェに生まれ育ち、フランスで美術教育を受け、その後パリで活動したのちロンドンでキャリアを積みました。
晩年は度々アメリカを訪れてはいますが、住んだことはないようです。

 

「どこの国の人」というのが掴みにくい画家ですね。
(実際、Erico は最初イギリス人だと思っていました) 

 

肖像画家、特に上流社交界の人々を描いた優雅な作風で知られていて、イギリスはエドワード時代 (長いヴィクトリア朝に続く、約10年間の短い王朝) に活躍しました。

彼が活動していた時代は、パリは印象派最盛期とも重なります。
当時 “アヴァンギャルド” だった印象派時代に、クラシックな貴族の肖像画… まるで時代の違うレイヤーを覗くようです。

 

しかし今回取り上げるのは肖像画ではなく、一連のヴェネチアシリーズより “Venetian Tavern” です。

ヴェネチア

サージェントという画家の名前を知っていたとしても、ヴェネチアを思い起こすことはあまりないのではないでしょうか。  

“ロンドン、貴族のエレガントな肖像画”

レディー・アグニュー 1892-93

からの

“光と水の風景画のヴェネチア” 
(写真なき時代の土産物から、風景画巨匠のJ.M.W.ターナーまで)

J.M.W. Turner / 嘆きの橋、ヴェネツィア 1840

はだいぶ雰囲気が違いますし、または時代を遡って
 

“流動的・色彩的なヴェネチア派絵画”

Tiziano バッカスとアリアドネ 1520-1523

ぜんぜん違いますね。
やはりちょっと意外な結びつきです。

 

洗練されたシーンを描いてきたサージェントですが、実はヴェネチアを「一番好きな都市」と呼び、たくさんの水彩画も仕上げました。

先述したJ.M.W.ターナー(18世紀イギリスの画家)も多くの水彩画を残していますが、画家はヴェネチアに行くと水彩画を描きたくなるのでしょうか。

 

確かにあの街の移ろいゆく光と水は、人をどこか感傷的に、感情的にさせますし、 それを表現するのには、感情と親和性のある水彩を使うのが最適なのかもしれません。


その繊細さは、沈みゆくヴェニスという都市を表すようです。

Erico 撮影。曇りだったので、色彩がありのまま見えます
J.M.W.Turner 水彩 / Venice-Looking east from the guidecca sunrise.1819
写真はどちらも10年以上前ですが、イタリアにおいて10年なんて1時間くらいのものでしょう。

さて、しかし今回取り上げる作品は油彩です。

サージェントはヴェネチアを、運河のある風景はもちろんのこと、街角や働く人々も多く写し取りました。 ここではとある室内のシーンが、筆跡の残るタッチでリズムよく生き生きと描かれています。

この作品、原題は Venetian ”Tavern”ですが、英語名は Venetian ”Wineshop”となっています。
[タバーン] と言うのは少々古風な単語で「居酒屋」「食堂」あるいはそれを兼ねた「宿屋」と言う意味ですが、「酒店」では絵の印象がだいぶ変わってきます。

絵を見てもショップというには店員もおらず、ワインが陳列されている様子もありません。 イタリアなので空のボトルを持って行って量り売りで注いでもらうのかもしれませんが、そのための樽なども見当たりません。

きっとここでは「食堂」くらいが一番近いのでしょう。

画面の観察

ここで、画面を細かく見てみましょう。
こういった、動きのある複数の人物が描かれている画では、それぞれの視線や仕草を追ってみると自然とメインのモチーフに導かれたり、全体の線の動きが見えたりして面白いものです。

①右奥の男性は右手に白ワインの入ったグラスを持っていて、その手前の男に視線を向けています。 (左手にワインボトルを持っているようにも見えますが、手前の男が持っているのかもしれません)

②その手前の男の視線は左側の女性へ向けられ、

③その女性は振り返り、左側の女性へ視線を飛ばします。 実際には、位置的に叶わないので空を見ていますが、あまり細かく見過ぎない方が良いです。 少し離れて全体をみると、首の仕草などから彼女へ線が繋がるのがわかります。

④左側。 一番左奥の女性は俯いて、視線はテーブルに。 そのテーブルから、手前の女性の手を通して間接的に線が彼女へ繋がります。

⑤その左手前の女性は右側の女性を見ており、二人の視線は画面の真ん中で出会います。

⑥背景を見てみると天井まで届くアーチがあり、左右のかたまりをつないでいます。 天井に吊るされた野菜(大蒜?)が画面を締め、また照らす光となっているのと同時に、その中のいくつかも線の延長は中央に。

こうしていくと、画面中央の空間★のあたりがぼんやり浮かび上がってきます。
このあたりを上から見ていくと、ここだけ大蒜(?)の隙間が空いており、奥の棚の柱を経由して床からこちらへ向かって何も遮るものがなく、観者へ向かって一本の透明な線が見えます。

大切な要素に触れていませんが、左側にひときわ目立つ、大きな丸いワインボトル。

こちらは次回取り上げます。

John Singer Sargent / “Venetian Tavern” (1902) ヴァージニア美術館
Written by E.T.

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