
「甲斐の国」のワインとは
いよいよ、作品に商品名まで書いてしまってあるワインについて迫ります。
とは言っても、エチケットからの情報は読み取れません。
わかるのは、「甲斐の国」「新オトナの習慣」という文字。
少なくとも山梨のワインであることは確実で、赤ワイン、白ワイン、ロゼワインの三種類がプロモーションされていたようです。
画面から読み取れるのはここまで。
1984年ではワイン自体はとっくに日本の市場にありますから、一体何が“大人の新しい習慣”なのか、気になるところです。
それは坂本龍一氏が教えてくれました。

なるほど、ワインをロックで飲む、というのが新しかったようです。
今回のワインは、当時は協和発酵(株)から販売されていた「サントネージュワイン」でした。
今でも、ワインを氷で割るのは邪道か?トピックをコラムなどでたまに見かけます。
ワインの美味しさを最大限に引き出して味わうのはワインへの敬意だとは思いますが、
美味しいと思う飲み方なのであれば、正解も不正解もないですよね。
(アイスティーすら氷なし派の私は入れませんが… 笑)
このサントネージュワインですが、今でも買うことができます。リブランディングされて、素敵なエチケットになっていました。
ただ、使っているぶどうの産地は当時と違いそう。当時は山梨で作られたぶどうがメインだったはずですが、今では山形のぶどうをメインにブレンドして作られているそうです。(ブランド公式サイトより)
販売元も変わっていて、今ではアサヒビールとなっています。
前編でも書きましたが、このワインのプロモーションのため、
協和発酵(株)→広告代理店→ウォーホル/坂本龍一氏
という流れで依頼があり、Ryuichi sakamoto の注文肖像画が制作され、そして翌年このポスター作品の完成となったという流れです。

まさかの、現在ヤフーオークションにかかっていました!
国産ワイン>日本ワイン
せっかくなので、日本ワインについて簡単に触れておこうと思います。
近年の「日本ワイン」の活気は、「日本ワイン」と「国産ワイン」の区別と表記基準がきちんと決められたことでもスピード感を増しています。
国産ワインのカテゴリに、日本ワインは含まれます。
しかし日本ワインのカテゴリに国産ワインは含まれないこともあります。
どういうことかというと、海外で作られたぶどうで果汁を作り、その果汁を輸入して日本で加工してワインにすれば、それは「国産」となってしまうということです。
一方、「日本ワイン」の原料は日本で育ったぶどうでなければなりません。
(最近では、「国内加工」と書かれた食品も多く見かけますが、これはまさに「国産ワイン」の考え方と同じですね)
この基準に則ったワインラベルの表示は2015年に定められ、ちょうど半年前の 2018年10月末から施行されています。
(政府のウェブサイトがけっこうわかりやすいので、詳しくはこちらもご参照ください)

蛇足ですが、ちなみに同じ飲料で見てみると、最近注目を浴びている「国産紅茶」。
紅茶の場合は海外で作られた茶葉を国内で加工、というプロセスは難しいそうで、「国産紅茶」も「日本紅茶」も「和紅茶」も、くくりは「日本ワイン」と同じになるそうです。
広告と宗教の共通点/ウォーホルの遺作にみる
そういうわけで、いわば広告用作品である今回の一枚。
「アート」と「デザイン」、「商品」と「作品」。
定義として線引きしようと思えば可能だけれども、不可分の部分も多くあるファクター。
定義として線引きしようと思えば可能だけれども、不可分の部分も多くあるファクター。
ウォーホルにかかればますますこの境界線はカオスになります。
では、「宗教画」と「広告」はどうでしょう。実は、ある部分とても似通っています。
なぜならカトリック教においては、聖書のイメージは布教のための大切なツール、まさに「ポスター」的な役割だったからです。
ところで、ウォーホルの「遺作」と呼ばれるものはなんだと思いますか。
彼は1987年2月に亡くなりますが、その前年、1986年に手がけていた一連のシリーズがありました。
それが、13人で魚とパンとワインをいただく・・こちらです。

一連の作品群は、かのレオナルド・ダ・ヴィンチのの最後の晩餐が収められているサンタ・マリア・デ・グラツィエ教会のすぐそばで、生前最後の展覧会となり展示されました。
遺作シリーズとなったのは偶然かもしれませんが、ウォーホルが最後の最後に「最後の晩餐」への取り組みを残してくれたことは、教会へ行くことを欠かさなかったという彼の、少し内の部分、言ってみれば表層の一枚下のレイヤーを私たちに垣間見せるチャンスをくれたような気がします。
Andy Warhol/ “Ryuichi Sakamoto 1983” (1984) テート・ギャラリー
Written by E.T.
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