名画のワインレビュー
後編は、ワインを振り返ってみましょう。
今まで扱った25の作品をワインの生産地別にマップにまとめました。クリック/タップしてお楽しみください。
(スマートフォンから見る場合は “INFO” をタップすると詳細がみられます。各記事にも飛べますのでぜひ!)
View 名画のワインマップ
ところで今更ですが、このブログの各タイトルは
【画家名 /作品名 ×ワイン名】
となっています。
お気付きの方もいらっしゃると思いますが、この [ワイン名] の表記方法は大きく分けて二つ、Frank さんは主に ぶどうの「品種」を、Erico は主に「生産地」を使っています。
ワインによって「品種」と「地域」どちらの情報がより大切かは変わってきます。
その地域で作られるぶどう品種がある程度決まっていれば、品種を言わずとも味わいのイメージはつきますし、(例えば、「ボルドーワイン」と言えばまず赤ワインを思い浮かべ、品種はカベルネ・ソーヴィニヨン〜メルローのブレンドの味わいを想像する) ぶどう品種はもう少し個性がはっきりしているので、好みのワインを伝えるときは品種で言うことも多いように思います。
「疲れたから甘やかなリースリングでリフレッシュしたい」とか「ちょっと肌寒いから温かい地域の豊満な赤が飲みたい」とか、時とシーンによってイメージしますよね。
絵画の中でも、大なれ少なれ、そういう要素があると思います。
ワインの味わいを決めるファクターを整理してみると、こういう感じかもしれません。
ワインの味わい=
ぶどう品種 × ぶどうの育った地域 + 生産者の特徴
人に例えれば、生まれ持った資質×教育環境+出会う人 でパーソナリティが変わってくるという感じでしょうか。どの要素も分かつことは出来ないし、全て揃って一本のワインのキャラクターです。
今回のレビューでは登場した25のワインについて、妄想に基づきぶどう品種と生産地をまとめてみましたので、俯瞰してみることにしましょう!
*上記のまとめマップよりキャプチャ。地図をクリックすると元記事にリンクします
*文字情報が微妙な位置にあるのは、なるべく地図の主要な地名をみていただきたかったからです・・。皆様各々のご存知の地名がどこかにあるといいな、と思っています
プールサール/Jura
ジュラ地方の80%以上の赤ワインに使われています。
色は濃くない割に香りは豊か。クールベのお父様はそんなワインに酔っていたのでしょうか?
秘密のアッサンブラージュ/Paris
恐らくはフランス南部のワインをパリでアッサンブラージュ。
それなりの味わいに仕上げられていた・・はず。
Chardonnay/ブルゴーニュ
ブルゴーニュ白ワインの基本品種ですが、世界中で作られています。
ここでは「ピュリニー・モンラッシェ村」のワインと推測。
ナッツや青リンゴのような香り、凝縮された味わいの、世界中が認めるワインです。
カベルネ・ソーヴィニヨン, メルロ/Haut-Medoc
5大シャトーを含む、ボルドーの中でも、いえ世界中でもっとも秀逸なエリアと言っていい場所。タンニン豊かで、深く複雑な味わい。飲みごろまでに年月を要するものが多いです。
パロミノ/Cadiz
酒精強化ワイン、シェリーです。
アーモンドやヘーゼルナッツなどの、ねっとりした香ばしい香り。
定番は食後酒ですが、スペインのスイーツにはアーモンドを使ったものが多いので、ぜひ合わせてみたいところ。
グルナッシュブレンド/Corbieres
南フランス、主に赤ワインの生産地です。とても広いエリアなので品質も様々ですが、AOCを取得してからは全体的に品質向上してきているようです。
冷やさなくても美味しいタイプで若飲みスタイル、秋のピクニックにはピッタリかも!
カベルネ・フラン/Touraine
涼しい気候で育ち、軽やかで透明感のある味わいです。デリケートな野いちごやスミレの香り、文中にもあるように、青っぽい風味が伴うことも多いです。
シュペートブルグンダー/Rheingau
ドイツでいう、ピノ・ノワール。
果皮が薄いので色合いも淡いワインになりますが、赤いフルーツの豊かな香りを持ち合わせます。この香りを最後に味わって、ころりと眠りにつけたら最高ですね。
ガメイ/Pays Nantais
ロワール地方のもうひとつの大事な黒ぶどう、この回ではロゼとして登場しました。さくらんぼとロゼワインで、これからの季節、夏の昼下がりのメニューとしては申し分ありません。
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ/Margaux
今ではクラシックの代表とも言える「マルゴー村」のワイン。当時は開墾されたばかりの新しい畑でした。今でいうとどこでしょう?イギリスのワインなどでしょうか。
グルナッシュ/Provence
南フランスのワインは、その生産量からどうしても「安価なワイン」という先行イメージがついてしまいます。でも、豊かな実りはそれだけで宝物。色づくワイン畑は、一度見たら忘れられません。
ヴェルメンティーノ/Bellet
こちらもプロヴァンス。ここでのヴェルメンティーノはお花の香り豊かな白ワインですが、実は赤ワインの方がたくさん作られています。ルイ14世も愛したと言われるワイン。
カーネーションの香りが映りこむワインなんて、ぜひ味わってみたいところです。
ピノ・ノワール/Champagne
出ましたシャンパーニュ!栽培の難しいピノ・ノワールはそれだけでもワンランク上のイメージのぶどうですが、シャンパーニュになると話はちょっと変わってきます。品種の高貴さは抑えて、シャンパーニュなるボトルにその賛美は譲りましょう。
寒い地方だからこそ生まれた泡ワイン、(実はその美味しさを評価したのはイギリス人) 気分を高めたい時には、永遠の定番です。
アルテス/Seyssel
フランス・サヴォワ地方、白ワインを作るところです。景観的にはほとんどスイスで、山と湖が広がります。(そういえば、私が受験した年のソムリエ教本にはこの地方は「セザンヌの滞在先」として記載されていたような・・。)
歴史的には、セイセルのワインは1145年に初めて資料に登場しており、歴史の古い産地と言えます。
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ/Pauillac
言わずと知れた、ボルドー格付け第1級、Château Mouton-Rothschild. つまりボルドーの味わい、ステイタスを牽引するワインのひとつです。 アーティストの手がけるエチケット・デザインで有名。「1924年ヴィンテージにアール・デコを代表するフランスのグラフィック・デザイナー Jean Carlu (1900-1997) のデザインが採用されたのが始まり。」詳しくは本文で。
ガメイ/Beaujolais
ボジョレーは、11月のものだけではありません。
ブルゴーニュにも劣らない名声を誇っていた時代もあるのです。昼食に、チーズとパンと軽くいただくにはぴったりではないでしょうか。
メルロ/Bordeaux 右岸など
ボルドーワインは、主にカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロ、(他プチ・ヴェルドなど)のぶどうをアッサンブラージュしてつくられ、左岸ではカベルネ・ソーヴィニヨン主体、逆に右岸ではメルロー主体のものが多いです。ここではよりやわらかな味わいに仕上げられる、メルロー主体のブレンドだったのではと推測しています。
ガルガネガ/Soave
イタリアワイン、フードフレンドリーなのは言わずもがなですが、そのみずみずしさや寛容さは心身ともにをゆるめてくれます。ソアヴェ・クラッシコはドライでミネラリーで花の香りも豊か。ヴェネチアの湿気たっぷりの空気の中でも、美味しくいただけるワインです。
グルナッシュ/Languedoc=Roussillon
それでもワインが生活に必須のフランスの画家たちにとっては、南フランスのワインにどれだけ助けられていたのでしょう。
太陽の恵みを受けてたくさん実ってくれるグルナッシュはそもそも糖度が高いので、アルコール度数も上がりやすく、若飲みでも芳醇で力強い味わいになってくれます。
マスカットベーリーAなど?/山梨
本ブログ唯一の日本ワイン。(当時使われていたぶどう品種まではわからず)今では「山梨」は「地理的表示」として認められています。(フランスで言うところのA.O.C.)
土地名を冠するのが認められるほど、品質や管理が客観的にも整えられたということです。
ゲビュルツトラミネール/Alsace?
打って変わって北フランスのぶどう、ゲビュルツトラミネール。ライチやバラの香り豊かなことで特徴的な品種です。香りについては本文をどうぞ。
ピノ・ノワール/Pommard
ブルゴーニュにおいてはその畑の複雑さには閉口してしまいますが、これも味わいの退化かと思うと仕方ありません。有識者、紳士が議論をしながら楽しむには、このくらいの気高さを必要とするのでしょう。
アブサン/スイスなどヨーロッパ
初めて耳にするには「ニガヨモギ」のリキュールなんて美味しそうでもないし、どうして流行ったのか不思議ですが、病害でワインの生産量が落ちたことやその中毒性など色々な背景があったのでしょう。生産禁止されてまた承認されるようになるなど、ちょっと特異な変遷をたどるアルコールです。
チェサネーゼ/Lazio
記録は古代ローマに遡る、ローマの土着ぶどう品種。
何千もの土着品種があると言われるイタリアですが、こうして名前が残っているのですからそれなりに愛されてきた品種なのでしょう。
ガメイ/Argenteuil
「ロワールのロゼワイン」、「ボジョレーの赤ワイン」と頻出するガメイ、今回は「アルジャントゥイユの赤ワイン」として明るい日差しの下での登場です。
軽やかでキュートな味わいは、甘酸っぱいフルーツと家族愛に寄り添ってくれています。
さて、最後に、今回使っているメイン作品画像の説明を。
画家はレンブラント・ファン・レイン、「アトリエの画家」/1626 です。
実は、当ブログのローンチ・デー(7/15)は、巨匠:レンブラントの生誕日から拝借しました。
しかし皮肉なことに、当方では現在まで彼の描いたワインの作品はまだ見つかっていません。いつか発見したら、記念日にフィーチャーしてみたいと思います。
今回はブログ1周年を記念して、前編・後編と 扱ってきた画家とワインについて25ずつまとめてみました。もっと知りたい作家、お気に入りのワイン、見つかったでしょうか。
これからも今まで通り進めつつ、新たな展開もできたらいいな・・と目論見ながら、アートとワインの隙間の話を綴っていきたいと思います。パートナーのFrankさん共々、今後ともよろしくお願いいたします!
July 2019
名画のワインリスト
メイン画像Rembrandt Harmenszoon van Rijn “Artist in his Studio” (1626) /ボストン美術館Written by E.T.
コメントを残す